市立加西病院
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放射線検査時の被ばくについて

胸部や腹部・腰椎・骨関節などの一般撮影、頭部や腹部のCT撮影、血管造影検査などにはエックス線という放射線が使われています。またアイソトープ検査には放射性同位元素から放出されるガンマ線という放射線が使われています。

病院で通常の検査に利用される放射線量は少なく健康への影響はまずありませんが、放射線の特性を理解し、より安心して検査を受けて頂くために簡単に説明いたします。

放射線に関するQ&A

Q1. 放射線とはどんなもので、どんな種類がありますか。
A1.  放射線は目にも見えず匂いも無く人間の五感では感じる事ができません。また放射線は光の仲間で物質を通過する力をもっています。
 その種類にはX(エックス)線、γ(ガンマ)線、α(アルファ)線、β(ベータ)線、電子線、陽子線、中性子線等があり、その透過力と身体に与える影響は種類により違います。
 β線は透過力が弱く紙一枚でも止まります。陽子線、中性子線は透過力や影響力が大きく、それを作る大掛かりな放射線発生装置を備えたがん治療専門病院や研究施設で利用されています。一般病院では透過力が診断に適し、被ばくによる影響が少ないX線、γ線が主に使われています。
 X線の通称としてレントゲンと言われることがありますが、発見者のレントゲン博士の名前から、この通称が世に広まっています。なお、この名称は1895年の発見時、今までにない未知なる放射線という意味でエックスと命名されたことに始まります。
Q2. 放射線と放射能は違うのですか?
A2.  放射線と放射能は異なります。放射能とは「ある物質が放射線を出す能力」のことで放射線とは物を通過する能力を持った光(エックス線等)の名称です。
 例えば「放射能」を光っている電球に例えると 放射線=光,放射性物質=電球,放射能=W(ワット)数となります。
 病院では一般撮影、CT部門で電気的に作りやすいエックス線を利用しています。またアイソトープ検査では身体のある特定の場所に集まるような性質を持たせた放射性医薬品(放射能を持たせている)から出てくるガンマ線を利用しています。
Q3. 放射線量の主な単位はなんですか。
A3.  放射線量に関する代表的な単位は下記のグレイとシーベルトがあります。

 ① 吸収線量 Gy(グレイ)
 ある物質に照射吸収される放射線のエネルギー量を表す単位で、人体では皮膚表面での入射線量として使われることが多いです。

 ② 実効線量当量 Sv(シーベルト)
 人間が被ばくした時の放射線量を表す単位で、放射線の種類や身体の部位・組織による影響の度合いを加味した線量です。Gyが物理量の単位と呼ばれるのに対し、Svは防護量の単位とも呼ばれています。

  この実効線量の計算は放射線の種類に対する影響の度合い(放射線荷重係数)と組織による放射線感受性の度合い(組織荷重係数)を吸収線量(Gy)に掛け合わせて計算します。
 その放射線荷重係数はエックス線やガンマ線は1で、中性子線、電子線、重粒子線などになると5から20の値になります。放射線治療にはこの影響が大きい中性子線、重粒子線がよく使われています。
 放射線感受性は乳房、リンパ組織・骨髄、消化管粘膜で高く、同じ放射線量でも影響が大きくなります。その組織荷重係数は感受性が高い乳房では0.12で感受性の低い骨、皮膚、脳などは係数が0.01と10倍以上小さくなっています。その組織荷重係数の和は全身として1.0になります。
 例として乳房撮影の場合、エックス線の放射線荷重係数は1.0、乳房の組織荷重係数は0.12なので 皮膚面吸収線量を3mGyとすると乳房の実効線量当量は3×1.0×0.12=0.36mSvとなります。 (2007年ICRP勧告Publ.103)

 ③ 放射能  Bq(ベクレル)
 ある物質が放射線を出す能力の単位で、アイソトープ検査で使用する放射性医薬品量はベクレル単位で計算して投与量を適正に決めています。
Q4. 胸部のCT検査と一般撮影検査ではどちらが被ばく線量は多いのですか?
A4.  一般にCT検査の方が放射線の被ばく線量は多くなります。それは人体の断面像を得るために撮影時間も少し長く、出力も多めになっているからです。しかしCT画像はより精密診断が可能です。病院では診断目的に応じた最適な検査を利用することで検査全体の被ばく線量減少を目指しています。
 下記に加西病院での主な撮影部位の被ばく線量を示します。(一般撮影系はNDD法と呼ばれる計算式に放射線を発生させる時の電圧の強さ・電流量・照射時間・患者様までの距離などをいれて計算で推定したものです。
 またCT、血管造影検査などは装置に備えられた簡易被ばく線量表示システムから得られた値です)

表1  エックス線検査による被ばく線量推定値 (成人)
検査名 入射面などの
吸収線量〔mGy〕
推定計算方式など
胸部単純撮影(正面) 0.2 NDD法 
撮影条件による計算推定値

例として
胸部正面撮影条件
120kV 200mA 0.01sec
150cm CRシステム
胸部単純撮影(側面) 0.4
腹部単純撮影(正面) 1.3
腰椎2方向(正面・側面) 6.3
肩関節正面 0.5
小児股関節(正面) 0.04
頭部撮影(正面) 3.0
乳房撮影(正面) 2~3 乳腺の吸収線量推定値
頭部単純CT 25~50 CTDI法
(表面から10mm深さ
  値  ・・装置計算概算値)
胸部単純CT 15~20
腹部単純CT 25~30
胃透視検査 50~100 撮影回数・透視時間でかわります
心臓冠動脈造影 300~2000
腹部血管造影検査 500~1500
Q5. 日常生活の中に放射線は存在しますか?
A5. 日常的に放射線は存在していて、これらを自然放射線と言います。主なものは地球の外からやってくる宇宙線、建物の材料や大地から放出される放射線、水や食物、人体から出る放射線などがあります。
★ 世界の平均自然放射線量は1年間に約2.4mSvで、日本では最大1.19mSv、最少で0.81mSvと言われています。 (1988年国連科学委員会推測値)
★ 「成田-ニューヨーク」往復の国際線乗務員の被ばく線量は1年間に約2.8~3.2mSvです。飛行機の高度が高くなるにつれ、宇宙線による被ばく線量が増えると言われています。
 自然放射線の被ばくは全身被ばくとして考えるので、組織荷重係数は1となり、またエックス線、ガンマ線が多いのでGy≒Svと考えて、シーベルト(Sv)単位で表現されます。
Q6. 放射線は人にどんな影響(障害)を与えますか?
A6.  放射線は人体の細胞に傷をつけたり死滅させたりする働きがあります。この働きによって起こる影響には、身体的影響(被ばくした本人に現れる影響)と遺伝的影響(被ばくした人の子孫に現れる影響)があります。
 その影響は下記表の通り分類され、時間的な影響から急性期影響(比較的早期に現れる影響)と晩発期影響(発病まで数カ月から数十年の潜伏期がある影響)に、またその発生する確率から確定的影響(しきい線量(障害が現れる最低の線量))と確率的影響(しきい線量が存在しない影響)に分類されます。

表2 放射線被ばくによる影響
影響の種類
(分類Ⅰ)
障害の種類 影響の種類
(分類Ⅱ)
身体的
影響
急性影響 皮膚の紅斑・脱毛・不妊・白血球減少等 確定的影響
(しきい線量有り)
晩発影響 白内障・胎児への影響等
白血病・がん等 確率的影響
(しきい線量無し)
遺伝的影響 代謝異常・軟骨異常等

表3  エックス線を一回全身被ばくした場合の影響
線量[mGy] 症      状
250未満 医学的な症状は認めない
250 白血球が一時的に減少する
1000 吐き気、嘔吐、全身倦怠、リンパ球減少
1500 50%の人が放射線宿酔
2000 5%の人が死亡
3000 脱毛 不妊
4000 50%の人が30日以内に死亡
7000 100%の人が死亡
(抜粋 放射線医学研究所資料)
Q7. 放射線に被ばくすると子供ができにくくなりますか?
A7.  通常放射線検査の被ばくが原因で不妊になることはありません。それは不妊になる線量にはしきい値があり、それを超えないと影響は無いといわれているからです。また生殖腺に直接被ばくすることは少なく、下記表に示しますが男性の一時的不妊を起こす150mSvは腹部撮影一回量1.3mSvから見ると約100回以上で通常は心配無いといえます。

表4  不妊に関する被ばく線量[mGy]
性 別 不妊の種類 1回急性照射(mGy)
男 性 一時的不妊 150~
永久不妊 3500~6000
女 性 一時的不妊 650~1500
永久不妊 2500~6000
(参考 日本放射線公衆安全学会資料)

表5  エックス線診断検査における生殖腺の被ばく線量
検 査 名 被曝線量 [mGy]
入射皮膚面線量 男  性 女  性
胸部単純正面撮影 0.2 検出線量以下 検出線量以下
腹部単純正面撮影 1.3 0.1 0.4
腰椎2方向撮影 6.3 0.1 0.2
胃透視検査 50~100 0.4 6.0
腹部単純CT 25~30 0.1 0.2
(参考 日本放射線公衆安全学会資料)
Q8. MRI検査は放射線を使用しますか?
A8.  MRI検査では放射線は使用しません。MRI装置は磁石や高周波を用いて画像を作ります。撮影には高周波を発声させるため、少し大きな音がします。また磁石が強いので、MRI対応以外のペースメーカーや磁石に反応する金属が体内にある方は検査できません。
Q9. 妊娠中にエックス線検査を受けましたが大丈夫でしょうか?
A9.  妊娠中のどの時期にどのようなエックス線検査を受けたかで、胎児への影響は異なります。しかし通常のエックス線検査で奇形や知的障害の子供が生まれることはまずありません。それは障害発生が多くなる線量にしきい値が存在し、通常の放射線検査でこの値をこえることはないからです。
 なお妊娠中及び妊娠の可能性を否定できない時は、事前に医師又は診療放射線技師にお申し出下さい。

表6  胎児に関するしきい線量
影  響 時  期 しきい線量
流産/胎児死亡 受精~9日 100mGy
奇形 受精後2~8週 100mGy
発育遅滞 受精後8週~出生
(特に8~15週)
100mGy
精神発達遅滞 120mSv
(「あなたと患者のための放射線防護Q&A」-草間朋子 著作-)

放射線画像検査は病気の診断、発見に大きな威力を発揮します。

放射線被ばくを気にするあまり、最適な検査の機会をのがさないようにして下さい。

なお我々、中央放射線科スタッフ(診療放射線技師)は検査や放射線被ばくについての不安を和らげるためにいつでもお話を伺いますので、お気軽にお尋ね下さい。

下記の参考団体のホームページでも解説がありますので、ご利用下さい。

-参考文献-
長崎県島原病院HP資料 
(財)結核予防会: 「放射線被曝のQ&A」
(公社)兵庫県放射線技師会: 「県民の皆様へ」
(社)日本アイソトープ協会: 「新・放射線の人体への影響」
医療科学社出版: あなたと患者のための放射線Q&A 草間朋子 著
国際放射線防護委員会: 2007年ICRP勧告Publ.103
(公社)日本放射線技師会: 「放射線安全管理の手引き」
(公社)日本放射線技師会: 「日本放射線公衆安全学会資料」